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尊敬し、憧れる2人の菓子職人の本が立て続けに出版されました。
お二人のことは、活字だけでなく、これまでの生き様やお菓子そのものもにも触れてきました。

2冊に共通するものは、菓子職人としての心意気です。

たかが菓子屋、菓子職人と言えども、日本の文化を支え、守る意識があるのか。

ごく浅い上っ面の部分ではなく、検索してすぐわかる程度じゃなく、体を使って、頭を使って、腹の底から理解しようと本気になっているのか。

石川さんは、伝承者の少ない有平糖の灯火を絶やさないために、和菓子屋の繁忙期で店売りを間に合わせるだけでも大変なのに、命を削るような執筆・撮影を重ねて本書を完成させました。有平糖の美しさと技術は海外でも高く評価され、日本での出版が始まったばかりなのに、仏語・独語にも訳され、海外での紹介も視野に入れて製作されたようです。

水上さんは、一流のパティシエとの交流や、海外で和菓子を紹介する活動を重ねる中で、菓子職人はもっと和菓子や日本文化に対してハングリーにならないといけないと、身をもって示しています。一幸庵のブランドブックの製作には実に5年の歳月が費やされています。72候の和菓子のなかで、「蟷螂生」のエピソードを読んで、鳥肌が立ちました。「和菓子は何でも表現できる、ことを菓子職人が知らない」「どんなに技術がすぐれていても、美味しくなければ始まらない。でもどんなにうまいと言ったところで、色気がなければ和菓子じゃない」

SNSの普及で、優れた菓子、優れた職人は一瞬にして世界中から注目を浴びる時代になりました。そんなキラキラした菓子や人と自分を比べて、劣等感を抱き、進むべき道を迷うことも少なくありません。そんな私に、この2冊の本は、進むべき道を示す灯台のように感じました。

本は単なる活字ではない。その人そのものだと深く思いました。