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京山
微笑庵のスタッフと一緒に京山さんに伺ったのは初めてです。
まずは、なにもかもが懐かしい。

饅頭ひとつ包むことができず、ピンポン玉を回すところから始まった私の菓子職人としての原点。当時10人いた兄弟弟子は全国各地から集まっていました。時に本人が、時にご両親が、師・佐々木勝さんに憧れていました。
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修行中の貴重な写真。製菓製パンさんが、師匠の取材で撮影した写真を、わざわざ弟子の私の分まで焼き増してプレゼントして下さいました。小林ゆかりさんの文章からは、そんな細部にまで気の付く温かさがにじみでていて、今でも読むと励まされたり、元気になることが多いです。

20代のスタッフに、直接伺わなければ食べられない絶品を紹介したくて予約をして買ったものは…
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団子と豆大福です。あまりの美味しさに、写真を撮らずに全部食べてしまったので、画像は弟子を代表して「菓匠徳増」さんの団子。新生TVチャンピオン極で優勝し、注目を集める「ハマの和ティシエ」も、師匠の団子の素晴らしさを誰よりも理解し、大切に受け継いでいます。

「美味しさ」というあいまいな概念に、絶対的な基準なんて無いように思われがちですが、私はあると思っています。それは、師・佐々木勝さんが、美味しさを言語化する天才でもあったからです。

「餡は柔らかさを極めるギリギリの線をめざす」
「餅であるならば、歯ごたえがないといけない」


トレハロースでおなじみの林原さんが出版した「トレハを知り、和菓子を創る」の中で、佐々木さんの文章が巻頭を飾り、出版記念講習会では、監修した全国多数の菓匠を代表して、佐々木さんが講師を務めました。その時に紹介した「萩の舞」の美味さは飛びぬけていましたし、「まりも」の美しさと卓越した技術に息をのんだ方も多かったと思います。

佐々木さんの味覚を研ぎ澄まさせたのは、幼少期の原体験だと、私は確信しています。
和菓子人
著書「和菓子人」には、佐々木さんの壮絶とも思える幼少期が、飾り気ない自然体の文章で描かれています。生まれて数か月で父を亡くし、子供4人を精一杯育てるお母さま。決して裕福ではない佐々木家が大切にしていたのは、暮れの餅つきです。つきあげた2斗のお餅が、カビが生える前にきれいになくなってしまう様子が、目に浮かぶように書かれています。

後半に、修行中の思い出を弟子が寄稿するコーナーで、北海道北斗市の福島さんが「つきたての餅に餡をつけて食べたアノ味が忘れられない」と書いています。まさに私も同じ気持ちです。師匠が作る大福には、師匠が1年を待ちわびて楽しみにしていた幼少期の餅つきの味が生きている。だからこそ、師匠の餅は絶品なんだと思っています。

微笑庵のスタッフに、「私は弟子たちに技術を教える、というよりも、人間を育てることを大切にしています」と語ってくださいました。

師匠の大福ではありませんが、菓子にはその人そのものがでる。
「菓子は人なり」
が、師匠の口癖でした。

団子や大福は日持ちがせず、取り寄せることができません。一見地味な朝生菓子ですが、私にはどんな菓子よりも輝いて見えます。まさに京山の宝物、私の人生の宝物の一つです。