カテゴリ:
わらびもち
わらびもち <器>角偉三郎作



あらゆる製菓材料の中でもっとも高いのが、この本蕨粉。
わらびの根の澱粉だ。
葛より格段に細いわらびの根からとれる蕨粉はほんの僅か。
特に国産は希少。
あまりにも高価なため、
取り組む和菓子店がほとんどないのが現状。
甘藷やタピオカの澱粉で代用している。

私自身、これ食べたさに
10年以上も東京の大好きな菓匠のもとへ通い続けた。
京都の名店をめぐり、食べ較べた。
そしてついに自分で作ることを決意。


本蕨粉を水でこねると手にすいつくような独特の粘りがでる。


銅鍋を強火にかけて煉る。まだ灰色。


煉って煉って煉り倒すと、灰色から茶褐色に変わる。
粘りはあらゆる澱粉のなかで一番強い。
だからこそ旨い。


煉りあがった蕨餅を特製の皮むき黄な粉にあげて、あんを包む。
師匠が「藤色」と呼ぶ薄紫色のこしあん。
蕨餅と同じやわらかさに炊き上げた。
あん玉にできるほど固いあんこでは、蕨餅の魅力は半減。
蕨餅とこしあんが絶妙にからみあい、渾然一体となる。

素材の希少さ高価さゆえ絶滅の危機にある「本蕨粉」のわらびもち。
時代に伝え残したい、大切な逸品。