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薯蕷煉切製

菊は花期が長いことから不老長寿の象徴。
旧暦9月9日は「重陽の節句」といい、
菊に真綿をかぶせて朝露を集め、その綿で体をぬぐうと、
邪気を払い、長寿が叶うと信じられた。

この菊に真綿をかぶせた意匠が「着せ綿」
という菊のお菓子の菓銘の由来である。

鎌倉時代、後鳥羽上皇はことのほか菊を好み、
自らの印として愛用した。
その後の天皇も菊の紋を自らの印として継承し、愛用したため、
菊のご紋(十六八重表菊)が天皇・皇室の「紋」として定着した。


この「三角ベラ」で菊の花弁を刻む。
最初にこのへらで菊を作った先人を心から尊敬したい。
素晴らしいデザイン、流れるような美しい仕事。
一年を通して、大好きなデザインのひとつだ。

修業中、「菊が生きていない」といって、
なかなか作ることを許されなかった仕事。
毎年、毎年作り続ける中で、
いつのまにか数千の菊を刻んできた。
少しは命を吹き込むことができただろうか。


最近、生菓子作りの楽しさを教えることが多くなってきた。
教えることで一番学んでいるのは自分自身だと思う。